医療コラム
耳鼻咽喉科コラム:突発性難聴について(平成22年6月15日)
「突然発症する原因不明の感音難聴」の総称であり,ほとんどが一側性で,再発は極めて稀です.原因としては局所の循環障害やウイルスの関与が示唆されていますが,いまだにはっきりしていません.2001年の全国受療患者数は35000人で,10万人に27.5人.50~60歳代に好発し,性差はありません.症状は突然発症する一側の高度感音難聴で,耳鳴りや耳閉感を伴う事が多く,めまいを伴うこともあります.治療はステロイドの全身投与が第一選択とされていますが,自然治癒することもあり,いまだにエビデンスが証明された治療法がありません.現在,ステロイドを中心に循環改善剤,ビタミン剤,代謝賦活剤,低分子デキストランなどの全身投与や高圧酸素療法,星状神経節ブロックなどの治療法を組み合わせて行われています.一般的には聴力改善の確率は約60%と推察され,めまいを伴う場合や高度難聴例,高齢者,陳旧例は聴力が回復しにくいとされています.当科における治療方針は低分子デキストラン,ステロイド剤,循環改善剤の点滴と代謝賦活剤,ビタミン剤の内服を基本とし,高圧酸素療法を適宜併用しており,原則として約2週間の入院治療をすすめています.新病院移転により,高圧酸素療法をしばらく中断せざるを得ず,ご迷惑をお掛けしましたが,この6月2日より高圧タンクが使用可能な状況となっておりますので,この場を借りてお知らせいたします.また当科における突発性難聴の治療成績は,難聴の重症度にもよりますが聴力回復判定基準によると,治癒が55%,著明回復が4%,回復が15%,不変が26%でした.聴力予後が悪い要因としては,やはり発症から治療開始までの期間が長いこと,高度の難聴,めまいを伴うことなどが挙げられますので,突然生じる難聴・耳閉感・耳鳴りがありましたら,出来るだけ早く耳鼻咽喉科へ受診することをお勧めいたします.
平成22年6月