平成22年6月に掲載した医療コラムで、平成21年12月に発売されたDDP-4阻害薬について糖尿病治療の歴史を変えるような薬が出現したとの記事を出しましたが、今度はSGLT2阻害薬が平成26年4月に発売されました。この薬はこれまでの糖尿病薬とは全く異なるしくみで血糖値を下げるもので糖尿病治療において新たな歴史が始まろうとしています。
従来の糖尿病薬は膵臓におけるインスリン分泌を促進させる、腸管でのブドウ糖吸収を遅らせる、インスリン抵抗性を改善させるなどと言った作用で血糖値を下げましたが、今回新たに発売されたSGLT2阻害薬は尿にたくさんの糖を排泄して血糖値を下げるというものです。糖尿病については『読んで字のごとし』で尿に糖が出る病気と思われている方が多々おられます。ところがこの薬は尿糖をどんどん出して血糖値を下げるわけですから驚きです。もう少し詳しく説明すると人体では腎臓にある尿細管を通って尿が出ていきます。その尿にはたくさんの糖が含まれていますが、SGLT2により糖を再吸収しています。このSGLT2を阻害すれば糖が再吸収されずに尿からたくさんの糖が出て行って血糖値が下がるというわけです。下図を参考にしてください。
この薬の特徴は日に1回の内服ですむことと体重が幾分か減ることです。ただし高齢の方や腎機能障害がある方は投薬できません。
当院ではSGLT2阻害薬の中でもっとも早く発売されたスーグラと言う薬を採用して8名の方に投薬していますが、現在のところ目立った副作用はみられていません。なおこの薬は新薬のため1年間は14日分しか投薬できないことを知っておいてください。平成27年5月1日からは長期処方が可能になります。
平成26年6月10日
総院長 難波康男