<C型肝炎治療の最新情報>
日本でもっとも多い肝臓病は、肝炎ウイルスによって起こるウイルス性肝炎です。肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型などがありますが、D型、E型は日本ではまれで、問題になるのはほとんどがA型、B型、C型の3種類です。A型肝炎ウイルスは急性肝炎を引き起こしますが、慢性化することはありません。B型やC型のウイルスに感染した人の中には慢性肝炎に移行する人があり、そして肝硬変、肝臓がんを発症する人もいます。
今回はC型肝炎について話をします。C型肝炎は1型から6型までありますが、日本人は1型と2型がほとんどで、3型の人がわずかに存在します。C型肝炎治療として、当初は1992年以降にインターフェロンという注射薬を基本にした治療が行われ、治療期間の延長やリバビリンという飲み薬の併用、ペグインターフェロンという週1回の注射ですむ薬剤も開発されました。インターフェロンを基本とする治療は、血中ウイルス量が多い患者さんは効きにくく、少ない患者さんは効きやすく、日本人では感染者の70%を占める1型(ほとんどが1b型)は効きが悪く、2型は効きが良いことが特徴でした。
2014年9月以降、インターフェロンを使わない飲み薬だけの治療(インターフェロンフリー治療)が可能となり、次々により治療効果の高い薬が開発されて現在に至っています。インターフェロンフリー治療では、副作用が少なく、これまでさまざまな合併症でインターフェロンが使えなかった患者さんでも安全に治療ができるようになりました。ただし治療を行うことのできる医師は肝臓専門医と消化器病専門医に限られています。
インターフェロンフリー治療で最初に登場したのが、1型に対する経口治療薬ダクラタスビル(商品名;ダクルインザ)とアスナプレビル(商品名;スンベプラ)の2剤併用療法(24週投与)でした。最近では、1型のC型肝炎ウイルスに対しては、ソホスブビル・レジパスビル配合錠(商品名;ハーボニー)による治療(12週投与)、パリタプレビル・オムビタスビル・リトナビル配合錠(商品名;ヴィキラックス)による治療(12週投与)、エルバスビル(商品名;エレルサ)とグラゾプレビル(商品名;グラジナ)併用療法(12週投与)、アスナプレビル・ダクラタスビル・べクラブビル配合錠(商品名;ジメンシー)による治療(12週投与)が行われています。一方2型のC型肝炎ウイルスに対しては、ソホスブビル(商品名;ソバルディ)とリバビリンの併用療法(12週投与)、パリタプレビル・オムビタスビル・リトナビル配合錠(ヴィキラックス)にリバビリンを併用する療法(16週投与)が行われています。さらに1型または2型のいずれにも該当しない患者さんには、ソホスブビル、リバビリン併用療法(24週間投与)が行われています。これにより、95%以上の人でウイルスを体内からなくすことが可能となりました。ウイルスがなくならない人は、肝炎ウイルス治療に対する耐性遺伝子を持った人でしたが、2017年11月よりグレカプレビル・ピブレンタスビル配合錠(マヴィレット)が発売となり、耐性遺伝子を持った人でも大半が治る時代がやってきました。しかも1型から6型の全てのC型肝炎を治療できるようになります。この薬が使えるようになるため、近々日本にC型肝炎の人はいない状態となることが予測されます。
(文責;興生総合病院 総院長 難波康男)