(胃癌検診について)
Ⅰ.対象者
50歳以上(胃部X線検査に関しては40歳以上に実施も可)
Ⅱ.受診間隔
2年に1回(当分の間、胃部X線検査に関しては年1回の実施も可)
Ⅲ.検査項目
問診に加え、胃部X線検査または胃内視鏡検査のいずれか
<胃部X線検査と胃内視鏡検査について>
胃透視検査は、飲んだバリウムを胃の中に薄く広げて、胃の形や表面の凹凸をレントゲンで観察するものです。一方、内視鏡検査は先端についた小型CCD(ビデオカメラ)で、胃の中を直接ビデオ画像で観察するものです。言い換えれば、胃透視は白黒の影絵を見ているにすぎず、平坦な病変や色の違いは認識できませんが(図1)、内視鏡は色の変化やわずかな粘膜の隆起や凹み、模様のちがいを認識できます(図2)。
図1. 胃透視検査
図2.内視鏡検査
※早期の胃がんでは、病変部がわずかな隆起や凹み、色のちがいとしてしか認識できないことが多いため、内視鏡の方がこうした病変の指摘には断然優れています。また、内視鏡では食道についても同様に観察できますが、胃透視では食道はさっとバリウムが流れてしまうため、小さな病変や平坦な病変の指摘は困難です。さらに、内視鏡では“がん”が疑われる病変があれば、その組織を一部採取(生検)して、病理診断(顕微鏡診断)によって本当に“がん”かどうかの確定診断をつけることができます。
こうした高い診断能にもかかわらず、これまで検診において胃透視が内視鏡よりも優先されてきた理由は、胃透視の方が手軽にできて(バスによる巡回検診も可能)、費用が安く、検査時間が短く、検査を行う人手も多いため(胃透視は放射線技師が主に施行、内視鏡は医師のみ)、より多くの受診者を検査することができたからです。
★胃透視の欠点としては、少量ではあるものの放射線被ばくがあります。
★内視鏡の欠点としては、多くの方が胃透視よりも内視鏡の方が苦しいと感じています。ただし、検査の際に鎮静剤(眠りぐすり)を注射して、眠っている間あるいはぼんやりした状態で検査を楽に受けることはできますし、口からの内視鏡よりも苦痛の少ない鼻から入れる内視鏡(経鼻内視鏡)も最近では多くの施設で行われています。
文責 難波康男