脳神経外科コラム8(意識障害について)
意識障害にはさまざまな原因があります。脳出血、脳梗塞や糖尿病性昏睡、低血糖性昏睡、尿毒症性昏睡、低塩症候群、心筋梗塞、アダムス・ストークス症候群、肝性昏睡、門脈側副路性脳症、肺性脳症、CO2ナルコーシス、癌の脳髄膜転移、癌性ニューロパチー、脳髄膜炎、アジソン病、バセドウ病、精神疾患、脱髄性疾患、薬剤・ガス・アルコールなどの中毒など、脳疾患だけでなく、内科的疾患も数多く含まれています。CTスキャンやMRIなどで明らかな異常が認められ、診断がついた段階で来院された方に関しては、その診断に従って治療を進めることが可能です。しかし突然、救急で意識障害の方が搬送された場合には、上記のようなさまざまな疾患を想定して、検査・診断しなければならず、また夜間・休日などスタッフ、検査体制が少ない状況下での、診断・治療は困難を要することがあります。また疾患によっては、経過をみないとわかってこない場合もあります。診断がついていれば、教科書のその病気の項目を調べれば、治療法が書いてあります。しかし突然、意識障害で来られた場合には、上記の多くの疾患の知識とそれぞれの治療法を知っていなければならず、莫大な量の知識と経験が必要です。近年、医師は専門分化され、また社会のニーズも24時間、365日、どこでも最高の医療が受けられるものだという高いものとなってきています。そのような状況の中、リスクを恐れ、不規則な時間外労働を嫌い、救急医療を担う医師が不足しています。このことは大きな社会問題となっています。意識障害の原因には、内科的疾患など現在かかっている病気に関連している場合もありますので、来院されるときには、現在治療されている病気や内服の情報などがわかれば非常に助かります。そのため日頃からご自分やご家族の病気を理解されていることは大変重要です。何の情報もなく来院されると、はじめから調べなくてはならない場合もあります。当院は長年、三原の救急病院として多くの救急患者を診て参りました。昨今の医療事情で、医師などスタッフ不足の状態ではありますが、今後も現状のスタッフで最大限の努力をして参ります。時間外救急の適正受診、救急車の適正利用なども含め、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
平成22年6月4日