平成23年1月までの連続50例のくも膜下出血治療成績について
まず治療成績とは、治療実績とは異なり、治療した症例数だけでなく、その症例が治療後どうなったかをお示しするもので、症例の重症度によっても変化します。くも膜下出血(その多くは脳動脈瘤の破裂が原因です)の治療成績の見方として、入院時の重症度ごとに、それぞれの治療成績をみる必要があります。例えば、軽症のくも膜下出血症例が多い場合には、治療成績もおのずと良くなり、重症の症例が多い場合には治療成績が悪くなるからです。
くも膜下出血には世界脳神経外科連合(WFNS)が作成した重症度分類というものがあります。少し複雑なので、おおまかにわかりやすく説明すると以下のようになります。
WFNS分類
グレード 1:意識清明な患者
グレード 2:軽度の意識障害がある患者で運動麻痺や言語障害は認められない
グレード 3:軽度の意識障害がある患者で運動麻痺か言語障害を認める
グレード 4:中等度の意識障害がある患者
グレード 5:重度の意識障害がある患者
平成23年1月までに来院された連続50例のくも膜下出血症例では、症状が軽度なグレード 1あるいは2は15例、グレード3は0例、グレード4は11例、グレード5は24例おられました。
また治療結果に関してはmodified Rankin Scale(mRS)という治療後の患者さんの状態を評価する基準があります。
modified Rankin Scale(mRS)
0:全く症状なし
1:通常の日常生活および活動は可能
2:以前の活動はできないが、介助なしに自分のことができる
3:何らかの介助を必要とするが、介助なしに歩行可能
4:介助なしに歩行や日常生活を行うことが困難
5:寝たきり、失禁、常に看護や注意が必要
6:死亡
当院に来院された時に症状が軽度であったWFNS分類でグレード1か2の15名の中で、予後(病気の経過についての医学的な見通し、または余命)が良好であったmRSで0から2までの方は12名(80.0%)おられました。mRS 3は0名、mRS 4は1名(6.7%)、mRS 5は0名、mRS 6は2名(13.3%)でした。中等度の意識障害のあるWFNS分類 グレード4の11名の方の治療成績は、mRS 0から2は7名(63.6%)、mRS 3は1名(9.1%)、mRS 4は0名、mRS 5は1名(9.1%)、mRS 6は2名(18.2%)でした。最重症のWFNS分類グレード5の方24名に関しては、その内全身状態が不良で、手術の適応がなかった方が17名おられました。この方々は残念ながらお亡くなりになられました。このグレードの治療成績はmRS 0から2は2名(8.3%)、mRS 3は1名(4.2%)、mRS 4は1名(4.2%)、mRS 5は1名(4.2%)、mRS 6は19名(79.2%)でした。
mRS 0-2 3 4 5 6
WFNS 1,2 12名(80%) 0名(0.0%) 1名(6.7%) 0名(0.0%) 2名(13.3%)
WFNS 4 7名(63.6%) 1名(9.1%) 0名(0.0%) 1名(9.1%) 2名(18.2%)
WFNS 5 2名(8.3%) 1名(4.2%) 1名(4.2%) 1名(4.2%) 19名(79.2%)
また現在2名のくも膜下出血の方が入院にて治療中ですが、自宅に退院された方の割合は来院時の症状でWFNS分類でグレード1あるいは2の方は86.7%、グレード4は63.6%、グレード5は16.7%でした。
くも膜下出血は急に発症する非常に怖い病気です。特に重症の方の予後は厳しい現状にあります。何とかお元気になっていただけるように、スタッフ一同治療して参ります。激しい頭痛や、今まで経験されたことのない頭痛などがおこった場合には、ぜひ来院されることをお勧めします。
平成23年2月6日